抗体薬物複合体(ADC)について、このような報道がありました。
ADC(抗体薬物複合体)って何?という方は、「抗体薬物複合体(ADC)のがん組織中の薬物放出・分布を可視化した画期的な方法を確立」(国立がん研究センター)のページが参考になりますよ。

本研究成果のポイント

以下、引用します。
・抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)は、抗体に抗がん剤などの薬を付加したもの。
抗体が特定の分子をもつがん細胞に結合する性質を利用して、薬を直接がん細胞まで運び、そこで薬を放出することで、抗腫瘍効果を発揮する。

・質量顕微鏡を用いて、がん組織中における、ADCからの薬物の放出を直接みることに成功。

・付加薬物を放射性同位元素で標識(ラベル)することなく、かつがん組織内での薬の放出と分布を観察できる方法の確立は、ADCの薬剤デザインを行う上で、画期的といえる。

背景

ADCを取り巻く背景については、以下のように述べられています。

ADCは、抗体によってがん細胞に標的を絞り、抗体に付加した薬物をがん細胞内に直接届けることで、がん細胞を攻撃し、かつ正常な細胞への影響を避けるという目的で設計された、新しいタイプのがん治療薬です。
海外、特に米国ではすでに50種類以上のADCの臨床開発が進められており、将来、多くのADCが日本にも導入されることが予想されます。

しかしその一方で、ADCが抗腫瘍効果を発揮するための必須条件である、
「ADCががん細胞に到達する」
「がん細胞中で薬を放出する」

という2点を正確に評価する方法がなく、ADCの創薬デザインにおいては至適な設計がなされていなかった可能性があります。


■ADCの仕組み
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①ADCが抗原に結合する。
②ADCと抗原が細胞内に取り込まれる。
③ADCがエンドソーム、ライソゾームにより分解され、薬物が放出される。
④細胞がダメージを受ける。

研究結果

今回の国立がん研究センターの研究結果については、このように結論付けられています。

これまでADCの体内動態をみるには、付加した薬を放射性同位元素で標識(ラベル)する必要がありましたが、この方法ではコストが高く、時間もかかります。
また、薬を放出する前と、放出された後の状態を見分けることができず、ADCが本当にがん細胞に到達しているのか、さらにそこで薬が放出されているのかまでは評価できませんでした。

本研究グループが確立した手法では、質量顕微鏡により、ADCから放出された薬剤を明確に同定することができます。
また、放出された薬がどこに、どの程度分布しているかを定性的、かつ半定量的に分析することが可能です。
さらに、薬を放射性同位元素でラベルすることなく評価できるため、従来の方法に比べて正確ながん細胞への薬剤の分布がわかるだけでなく、コストや簡便性の点でも優れています。


以上、国立がん研究センターによる、抗体薬物複合体(ADC)の研究結果を簡単にまとめました。
ADCを勉強する際の参考にしてみてください。